テクノロジー

未来をつくるやさしい力、
リアルハプティクス®︎

私達はものに触るとき、ものを握る/持つとき、絶え間なく力加減を行っています。普段生活する上であまり意識しませんが、これは「力触覚」という、多くの生物が進化の過程で獲得した感覚であり、物理的な接触動作には欠かせない能力です。ロボットが人間の生活空間で協働するためには、ロボットも力触覚を備え、人間のように、ときには力強くときにはやさしく触る機能が必要です。

リアルハプティクス®︎とは

リアルハプティクスとは、ロボットに力加減を感じる能力と力加減による制御を行う能力を与え、ロボットがモノの感触を感じながら力加減をすることを可能にする技術です。リアルハプティクスには、以下の3つの特徴があります。

1. 力センサを使わずに、力情報を正確かつ高速に取得
2. ロボット2台の位置・力を同期し、鮮明な力触覚情報を伝送
3. 位置・力の統合制御で、ロボットのしなやかな接触動作を実現

まず、特徴1と2について、「ありのままの感触が伝わる遠隔操作」を例に説明します。

リアルハプティクスの説明図

人が風船を押すと、風船の感触が手に伝わります。ここで人と風船を分離し、それぞれに2台のロボットA、Bを用意します。更にこの2台のロボットをリアルハプティクスによる力触覚伝送制御を適用します。この状態で人がロボットAを動かすと、離れた場所にあるロボットBも同じ姿勢を保つように動き、風船に接触します。すると、人はロボットを通して、風船の感触をありのままに感じるとともに、風船に対しても人の力加減をありのままに与えることができます。これは、次のリアルハプティクスの特徴1、2によって可能になります。

1 力センサを使わずに、力情報を正確かつ高速に取得

力加減や感触の情報(あわせて力触覚情報といいます)は、「位置」の情報と「力」の情報の組み合わせでできています。通常、「位置」は位置センサ、「力」は力センサと別の情報源から取得するのが一般的ですが、組み合わせる時に2つの情報に時間のずれがあると、実際とは異なる力加減や感触になってしまいます。リアルハプティクスを使えば、ロボットのアクチュエータの回転角度である「位置」を元に、アクチュエータにかかっている「力」を独自のアルゴリズムによって高速に推定することができます。そのため、時間のずれが発生せず、力加減や感触の情報を取得できます。また、力センサが不要なため、高額な力センサのコストを削減でき、力センサの破損による故障を防ぐこともできます。

2 ロボット2台の位置・力を同期し、鮮明な力触覚を伝送

リアルハプティクスを使うと、ロボット2台に対して「位置の同期」と「力の同期」を、同時に行うことができます。ロボット2台は互いに同じ姿勢を保つように位置を制御されます。同時に、特徴1で取得した力の情報をもとに、ロボット2台が互いに力のつり合いをとるように制御されます。この位置と力の同期によって力触覚を双方向に伝送することができるようになります。この力触覚伝送の中で、モノにあわせた人の力加減を含んだ動作をデータとして抽出し、記録することもできます。

以上は遠隔操作の例ですが、特徴2で抽出した人の力加減のデータをもとに、ロボット単体を動かすこと(自動化)もできます。この時、次の特徴によって、ロボットは人のようにしなやかな動きを実現することが可能です。

リアルハプティクスの説明図

3 位置・力の統合制御で、ロボットのしなやかな接触動作を実現

人は、動作の瞬間に動きの硬さ・柔らかさを無意識に調整していますが、一般的なロボットは硬い動き(位置制御)か柔らかい動き(力制御)のどちらかしか行えないため、人のようなしなやかな動きをすることが苦手です。しかし、リアルハプティクスは、位置と力の統合制御により、硬い動きと柔らかい動きをリアルタイムかつ無段階に調整することができます。そのため、ロボットは人の動きと同じように、しなやかにモノに接触することができます。

特徴1~3を組み合わせることで、様々なソリューションへの応用が可能

リアルハプティクスは「力情報の取得」「力触覚伝送」「位置・力の統合制御」を組み合わせることで、様々なソリューションへの応用が可能です。遠隔操作や自動化の他、人手作業の可視化・分析、仮想空間での感触再現(VR)にも応用できます。